最終話

89 名前: ◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:19:38.60 ID:QnPTdZRP0

( ゚∀゚)「さてと、あらかた後片付けは終わったな。」

ジョルジュがそう言った。
ドクオはあれから病院に運ばれた。
もちろん闇医者だが。
医者の話では、生きているのが不思議なくらいの大怪我を追っていたらしいが、病院の前に着いたときには、ドクオはすっかり起きており、あま つさえ一人で歩いていた。
医者から絶対安静を言い渡されたドクオは、今ではショボの隣でベッドを並べて仲良く寝ている頃だろう。

タカラは縛ったまま運営の派出所の前に放置しておいた。

(#^Д^)「内藤!!!てめえだけは許さねえぞ!!!ムショから出たらまずてめえを殺してやる!!!ぶっ殺してやる!!!」

目を覚ましたタカラの叫んだ台詞が、僕の耳にこびりついて離れない。

( ゚∀゚)「どうした?内藤。」
( ^ω^)「・・・・・・、なんでも無いお。」
( ゚∀゚)「そんな事より、無事にこの件も片付いたし、ソープにでm(ry」
( ^ω^)「悪いけど、まだやらなきゃならない事があるんだお。」

僕はそう言うと、組の車へと乗り込む。

90 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:19:53.92 ID:QnPTdZRP0

( ゚∀゚)「んだよ、付き合い悪いな」
( ^ω^)「ソープなんかに付き合えるかお!」
( ゚∀゚)「せっかくいい店いくつかピックアップしといたのによ・・・。誰かと一緒にハシゴしたいんだよ。」
(;^ω^).。oO(飲み屋感覚!!? )

僕は黙って車を走らせた。
途中、車の端を電柱にぶつけた。
僕は免許を持っていなかった。








91 名前: 以下、名無しにか わりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/01/08(日) 01:20:43.84 ID:QnPTdZRP0

目の前の扉をノックする。
僕が立っているのはくるぶしまで埋まる豪奢なじゅうたんの引かれた、とある豪邸の廊下だった。

「入れ。」

豪邸の主から許しを貰い、僕は部屋の中へと入る。
部屋の中、豪奢なつくりの机と椅子に一人の老人が座っていた。
細く、弱弱しい体の中で、目だけが肉食獣のようにぎらついている、80近い老人。
輪呂巣会会長・輪呂巣良介だ。

輪呂巣会長「・・・・・・・・・。」

ついさっき、彼の元に流石組の潜伏先へギコが突撃して、連中を皆殺しにしたという報告が入った。
傘下の多くの組を潰した、恐るべき、そして憎むべき敵を倒した今、彼は何を思うのか。

( ^ω^)「・・・・・・・・・。」
輪呂巣会長「武運のところの若造か。何の用だ?」
( ^ω^)「・・・・・・見せたいものがあるんですお。」

92 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:21:24.29 ID:QnPTdZRP0

怪訝そうな顔をする会長を他所に、僕は彼の座る机の上に一枚の紙を乗せ た。
流石兄弟の兄者に渡された、あのリストだ。
本来は何十枚もある書類の中の一枚なのだろう、その紙はちょうど、武運組の情報が載っているページだった。

輪呂巣会長「武運組の情報か。よくもまあここまで調べ上げたもん―――」
( ^ω^)「あなたですね?」

会長の台詞の途中で、僕の声が割り込む。

輪呂巣会長「あ?」
( ^ω^)「連中に僕らの情報を流したのは、あなたなんですね?」
輪呂巣会長「てめえ・・・何を言って・・・」
( ^ω^)「ショボに調べてもらってたんですお。連中の武器がどこから来てるのか。」
輪呂巣会長「・・・・・・・・・。」
( ^ω^)「連中の持っていたアップルP-26.採用されたばかりで、実際に配備されていないこの銃を横流ししていたのは、東方第三旅団 のタシロス大佐だけだったそうだお。」

僕はそこで一息つく。

93 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:21:45.28 ID:QnPTdZRP0

( ^ω^)「そう、あなたに銃器の横流しをしていたあの大佐ですお。 この銃を手に入れることのできるヤクザは、VIP中であんただけだったんだお。」
輪呂巣会長「何が言いたい?」
( ^ω^)「流石組の連中に武器を渡したのはあんたなんじゃないかお?」
輪呂巣会長「・・・・・・・・・・・・。」
( ^ω^)「このリストも、あんたなら傘下の組の事ならこれくらいくわしいことを知っていてもおかしくないお。」

会長は黙ったままだ。
僕は畳み掛けるようにさらに言葉を続ける。

( ^ω^)「思えば、おかしい事だらけだったお。流石組の組員の一人、ヒッキーという男は、あのいくつもの葬儀が執り行われた日、あらか じめ輪呂巣会の誰が何時、何処にいくのかを知っているような口ぶりだった。」

―――「本当は今死んでも良かったんだけど、あんたよりも重要な標的がいるんでね。そろそろ時間だから行かなきゃならない。」

ヒッキーの台詞が僕の頭の中でだけ反芻される。

( ^ω^)「連中にモナーの叔父貴の、それぞれ葬儀を周る予定時間を流したのは、あなたですね?」
輪呂巣会長「・・・・・・・・・・・・。」
( ^ω^)「もしかしたら、スレスト建設の連中に銃を渡したのも、あなたなんじゃないですかお?」

94 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:22:23.85 ID:QnPTdZRP0

そこで、会長が唐突に笑い出した。

輪呂巣会長「まさか、てめえみてえな若造に全部見破られるとはな。」

弱弱しいその体躯には似合わない、剛毅な笑みだった。

( ^ω^)「傘下の組の組長や若頭、重要人物がどんどん襲われているのに、なぜか輪呂巣会の会長であるあなたや、輪呂巣会の重要人物は誰 一人殺されなかった。誰だっておかしいと思いますお。」
輪呂巣会長「成るほど、他の馬鹿どもとは違って、うちの傘下にもお前みたいな頭の回るのがいるようだな。」
( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・。」

今まで”老獪”という言葉を絵に書いたような、体は衰えていても策謀や知略に関しては他者に引けを取らないような、そんなイメージだった会 長のふいんき(←何故か(ryが一変した。
その枯れ木のような手足には覇気が宿り、老いながらもまだまだ狩りを続ける鷲のような、力強い気配を放っていた。
先程までとはまるで別人だ。

( ^ω^)「ただひとつわからない。なんであなたはわざわざ自分の部下を殺すような真似をしたんだお?」
輪呂巣会長「ふん、多少頭は回るようだが、状況やこの世界の事情についてはサッパリのようだな。」
( ^ω^)「・・・・・・どういう事だお?」
輪呂巣会長「おまえは今のVIPについてどれだけ知ってる?過去、何故我々総会屋がVIPで栄えたか知っているか?」

105 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:42:19.71 ID:QnPTdZRP0

それは知っている。
五十年前、設立されたVIP板。
ある日、ゴミ溜めでしかなかったVIPに数人の人間が住み始めた。
他板の権力争いに破れた連中だという説もあるし、あちこちの板から自然に集まっていったという説もある。
だが、その日からVIPには、数は少ないが人が住むようになった。
ゴミの中にはまだまだ使える物があったし、何より、ニュー速のゴミ処理場として作られたばかりの埋立地だったVIPには、まだまだ広大な土 地が広がっていた。
VIPに移住した彼等は必死で位置から村を作り、村興しをして必死で住みやすい環境を作った。
やがて、埋立地に広がる広大な土地の話を聞きつけ、あちこちの板を追い出された連中、他板のローカルルールに飽き飽きしていた連中が続々と 集まってきた。
村が町になり、町が都市になった。
ニュー速のただのゴミ廃棄場でしかなかった埋立地に、あらたな大都市が誕生した。
VIPに行けば土地が手に入り、その土地を開拓し、都市を巨大化させていくための仕事を得る事が出来る。
生まれたばかりのVIPなら、誰もが新参のVIPなら、誰であろうと権力者になり得る。
今ではVIPの勢いは衰え始めているが、当時はそんなVipper's Dreamを抱いた人々が集まり、何時しかVIPは全板の中で最大の人数を誇る板となった。
だが、人が集まれば当然犯罪も増える。
特に、VIPに集まってきた人間の半分近くが、他板で問題を起こしてきたならず者か、他板で権力争いに敗れた連中だった。
犯罪は日に日に激化し、VIPに勢力を伸ばそうとしてきた他板のギャングやヤクザと、VIP内の新生ヤクザ、ギャング達との抗争が勃発し た。
その頃が、VIPの裏社会に生きる人間達の全盛期だった。

106 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:42:52.81 ID:QnPTdZRP0

輪呂巣会長「あの頃が俺達の黄金時代だった・・・。」

そう語る会長の目には、昔を懐かしむような、それでいてどこか夢を抱いた少年の純粋さを孕んだような、不思議な目をしていた。
何時もの油断のならなさそうな、ギラついた目ではない。
おそらく、輪呂巣会長がVIPに来た時もそんな目をしていたのだろう。
とても澄んだ、この老人に似合わないほどに澄み切った目だった。
VIPで生まれてVIPで育った僕のような第二世代Vipperにはわからない時代の目だ。
おそらく、長い年月を辿るうちにくすんで、錆付いてしまった・・・。

輪呂巣会長「だが、今はどうだ。規制がしっかりしてくるにつれて人々は減り、今ではかつてのVIPの勢いは見る影も無い。」

先程の澄んだ目から一転して、輪呂巣会長の目に不穏な光が宿った。

輪呂巣会長「輪呂巣会傘下に、何人の総会屋が居るか知ってるか?直系で3000人。その直系傘下のさらに傘下に入ってる連中を含めれば、 5000人を超えるだろう。今のVIPの裏社会に、今の輪呂巣会にそれだけの人間をまとめるだけの力は無い。」
( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・。」
輪呂巣会長「今はまだいい。だが、これからさらにVIPの勢いは落ちていくだろう。そうなったら、輪呂巣会はどうなる?」

107 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:43:15.25 ID:QnPTdZRP0

その時、僕は会長の目の不穏な光の正体が分かった。
狂気だ。

輪呂巣会長「そうなる前に俺は!この輪呂巣会を!”ふるい”にかけなければならない!!弱者を間引いて!!!必要な人材だけを残さねばなら ない!!!」

気持ちが悪い。
会長の話を聞いて、目を見て、僕は素直にそう思った。

輪呂巣会長「俺はまずスレスト建設の奴等をたきつけた。今回の、流石組の件のデモンストレーションのつもりだった。」

会長の目は、明らかに自分の持つ大儀や正義に酔った者の目だった。
吐き気がする。

輪呂巣会長「奴等はよくやってくれた。おかげで俺は今の輪呂巣会の中にも残すべきもの、間引くべき者がいると確信できた。」

間引くべき者―――スレスト建設の連中と、それに殺された武運組の組員の事だろうか。

108 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:43:35.78 ID:QnPTdZRP0

輪呂巣会長「次に、俺はあらかじめ声をかけておいた、高句麗一門を破門 されて途方にくれていた流石組の連中にリストを渡した。輪呂巣会傘下の組の主要人物やら詳細情報の載った、このリストをな!!!!」

会長は、先程僕が机の上に乗せた紙を掴み、掲げる。
聖書や十字架を天高く掲げる聖職者のように。

輪呂巣会長「最初のころは奴等は計画通りに動いてくれた。だが、時間が経つにつれ生き残った奴等は警戒するようになった。」
( ^ω^)「だからモナーの叔父貴を殺すように仕向けたのかお?」
輪呂巣会長「そうだッ!!!なよなよした、ぬるま湯に浸かりきった”穏健派”等という惰弱な連中に今後の輪呂巣会は任せられん!!!」
( ^ω^)「・・・・・・・・・。」
輪呂巣会長「そして今ッ!!!俺の目論見どおりッ!!!流石組を退けられなかった脆弱で緩みきった連中が淘汰されたッ!!!俺は輪呂巣会の 膿を吐き出させた!!!」

僕の頭は怒りで真っ赤に染まっていた。
目を閉じても、僕の眼球は赤色しか映さない。

―――輪呂巣会の膿を吐き出させただと?

会長は神意を告げる預言者でも気取っているのか、何事かをさらに語りつづけている。
そのこっけいな姿に、僕は片方の口の端を歪めて薄く笑う。

―――最大の膿がこうして僕の目の前に居るじゃないか。

109 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:44:01.87 ID:QnPTdZRP0

( ^ω^)「あんた、狂ってるお。」
輪呂巣会長「――――何?」

僕の一言に、それまで必死に何かを語り続けていた会長の口が止まった。

( ^ω^)「あんたのそのふざけた計画のせいで、何人死んだと思ってるんだお?」
輪呂巣会長「奴等が死んだのは弱かったからだ!!!全ては輪呂巣会のために!!!!」
( #^ω^)「ふざけるなお!!!!!そんな事であんたはツンを危険に晒したのかお!!!」

僕は腹の底から叫んだ。
ツンは、スレスト建設との一件で、銃口の前に晒されかけた。
あの時、泣いていたツンの声や顔を思い出し、僕の怒りが瞬間的に沸点を超える。
殴りかかろうと足を動かした瞬間、パン、という大きな音が響いた。

( ^ω^)「・・・・・・・・・?」
輪呂巣会長「おまえも・・・、他人に情をかけるしょうもない弱者なのか?」

見れば、僕の腹が赤く染まっている。
それを理解すると同時に、その場に倒れこむ。
机の下から出された会長の手には、硝煙を吐き出し続ける拳銃が握られていた。

110 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/08(日) 01:44:47.71 ID:QnPTdZRP0

輪呂巣会長「流石組の連中の突撃を三回も退け、俺の企みに気づいたおま えを殺すのは正直惜しいよ。だが、俺は俺の考えに賛同しないヤツを輪呂巣会に、俺の懐に入れておいてやるほど心が広くないんだよ。」

(;^ω^)「う・・・・・・ッ!!!!」

僕は床に敷かれた豪奢な絨毯の上で呻きながら手足を動かし、立ち上がろうとする。
だが、その前に会長が立ち上がり、片手で杖を突きながら立ち上がる。
もう片方の手には拳銃。
会長は躊躇うことなく、立ち上がりかけた僕の足を打ち抜いた。

(;^ω^)「・・・・・・・・・・・ッ!!!!」

僕は腹の痛みと足に新たに走った激痛に、声も出ない。
会長は再び絨毯に倒れこんだ僕の頭に、銃口を向ける。

(;^ω^)「・・・・・・・・・。」

僕は動けぬ体の代わりに、視線に力を込め、会長を睨みつける。
だが、会長はそんな僕を嘲るように、見下すように笑うと静かに引き金に添えられた指に力を入れた。
銃声が響く。

126 名前: 無糖栄助 ◆HOKURODlk6 投稿日: 2006/01/08(日) 02:13:37.51 ID:QnPTdZRP0

輪呂巣会長「ぐぁ・・・・・・ッ!!!!!!」

だが、響いた悲鳴は僕の物ではない。
部屋の入り口の方向から放たれた銃弾が、会長の手の中に握られた拳銃だけを正確に打ち抜き、地面に落としていた。
僕と会長の視線が、同時に部屋の入り口へと向けられた。
すると、開け放たれたドアの向こう、人影が倒れているのが目に入った。

/ ,' 3「zzzZZZZzZZZZZZzzzzZZZZzZZ」
(;^ω^)「荒巻!!!!!!!」
輪呂巣会長「てめえは・・・・・ッ!クオリティー商事のところの会計士ッ!!!!!!」

倒れているように見えた人影は、床に寝転がっている荒巻だった。
荒巻の手には拳銃が握られている。
銃口から吐き出されている硝煙を見れば、先程の銃撃が荒巻によるものだと理解できる。

/ ,' 3「悪いけど、全部聞かせてもらったよ。」
(;^ω^)「荒巻が喋った!!!!!!!?」
輪呂巣会長「何?聞いたからなんだっていうんだ?ああ?」
/ ,' 3「聞いたからには・・・・・・」

荒巻は、床に寝そべったその体勢のまま転がりながら会長に近づいていくと、会長の手に手錠をはめた。

輪呂巣会長「な・・・・・・ッ!!!!!」

129 名前:
無糖栄助 ◆HOKURODlk6 投稿日: 2006/01/08(日) 02:14:07.00 ID:QnPTdZRP0

/ ,' 3「聞いたからには君を逮捕させてもらうよ。」

そう言うと、荒巻は懐から二つの物をとりだした。
ひとつは、削除人や記者等、運営人やそれに携わるものしか持つ事ができない星型のキャップ。
もうひとつは、輪呂巣会長の台詞を一部始終録音したテープ。

輪呂巣会長「てめえ・・・まさか・・・。」
/ ,' 3「すまない。その『まさか』なんだ。僕は運営の内偵でね。輪呂巣会と軍部の一部、それに削除人の一部との癒着を調べていたんだ。」

荒巻がそれだけ言うと、開け放たれたドアから別の削除人と思われる男達が部屋に入ってきた。
会長を無理矢理立たせると、邸宅の外に引っ張っていく。

/ ,' 3「寿命が先に来るか、刑務所でお勤めを終えるのが先か、まあ頑張ってくれ。」
(;^ω^)「・・・・・・・・・(ポカーン)」

僕が呆然としていると、荒巻は僕の側に、そのまま転がって近寄ってきた。
そして、再び手を懐に入れる。

/ ,' 3「残念だけど、君にも銃刀法違反等、様々な容疑がかけられている。」

僕はこの場で逮捕され、長い刑務所生活を想像して固まった。

131 名前:
無糖栄助 ◆HOKURODlk6 投稿日: 2006/01/08(日) 02:14:32.76 ID:QnPTdZRP0

だが、何時までたっても僕の両手首には、手錠の鉄の重さはかからなかっ た。

( ^ω^)「僕も逮捕しないのかお?」
/ ,' 3「うん。手錠はひとつしか持って無いからね。さっき会長にかけたので終いさ。それに―――」
( ^ω^)「それに?」
/ ,' 3「僕だって逮捕すべき人間と、すべきでなう人間の区別くらいは出来る。」
( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・。」

僕は荒巻の言葉に、初めて荒巻の声が聞けた驚きと、高校時代からの友情、それに僅かな感動を抱きつつも、とある事に気づいた。

(;^ω^)「ちょっと待つお、荒巻、おまい会長の話を全部録音してたのなら、最初からこの部屋のやりとりを聞いてたはずだお。」
/ ,' 3「そうだよ。」
(;^ω^)「なんで最初に撃たれた時に助けてくれなかったんだお!」
/ ,' 3「・・・・・・・・・ノリ、かなぁ・・・・・・。」
(;^ω^)「ちょwwwおまwwwwもういいから早く救急車呼んでwwwww」
/ ,' 3「そう言えば撃たれていたんだね、君は。」
(;^ω^)「ああ・・・なんか貧血で目の前がくらくらしてきt(ry」

僕の視界が上から少しずつ暗くなっていく。
どうやら瞼が閉じていっているらしい。
閉じた瞼の裏に、最後に映ったのはツンの顔だった。
―――ツンに会いたいなぁ・・・・・・。
僕は再び、そう思った。

134 名前:
無糖栄助 ◆HOKURODlk6 投稿日: 2006/01/08(日) 02:15:01.64 ID:QnPTdZRP0

僕のその思いは、案外早く叶えられた。

( ̄ェ ̄)「やあ、目が覚めたかい?」
( ^ω^)「ここは・・・?」
( ̄ェ ̄)「病院だよ。非合法だがね。」
( ^ω^)「ちょwwwなんだかデジャヴがwwwww」
( ̄ェ ̄)「ほら、そう騒がない。丸一日眠りっぱなしだったんだから、頭がふらふらするはずだよ。」

僕が起き上がろうとすると、腹部に痛みが走った。

( ̄ェ ̄)「まだ起きない方がいい。弾丸は運良く貫通してくれたが、動くとまた傷口が開く事になる。」

見れば、僕の腹と右足には包帯が巻かれている。
僕はなんとなく自分のおかれている状況を理解した。
ヤクザ同士のいざこざで怪我した僕を病院に運ぶわけにも行かず、この闇医者の下に連れてこられたのだろう。
このベッドに横になるのも、ツンと共にタコ部屋から脱出した時以来だ。

(´・ω・`)「よう、新入り。」
('A`)「兄貴も来たんですか。」

隣の病室から来たのだろう、僕の病室の入り口にショボとドクオが立っていた。

135 名前:
無糖栄助 ◆HOKURODlk6 投稿日: 2006/01/08(日) 02:16:14.32 ID:QnPTdZRP0

( ̄ェ ̄)「ドクオくん、ショボくん、君等まだ絶対安静なんだから、勝 手に動かないで。あとドクオくんはなんで靭帯とか腱とか切れてるのに平気な顔で歩いてるの。」

そういって、闇医者が二人を隣の病室へと追い返す。
丁度闇医者が僕の病室に戻ってくる事にインターホンが鳴った。

( ̄ェ ̄)「お客さんかな?ちょっと見てくるよ。」

そう言って闇医者は僕の病室から出て行く。
僕は病室の中で一人佇む。

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・。」

頭の中に浮かぶのは、ツンの事ばかり。
今日はもうVIPに帰ってきているはずだ。

―――会いたいなぁ・・・・・・。

ξ;゚听)ξ「内藤!!!!!」

ああ、ツンに会いたくて幻聴まで聞こえてきた。

ξ;゚听)ξ「内藤!!!!!無視すんじゃ無いわよ!!!」

声だけじゃなくて、ツンの姿までしっかりと見える。
なんだか怒ってる。

136 名前:
無糖栄助 ◆HOKURODlk6 投稿日: 2006/01/08(日) 02:16:51.98 ID:QnPTdZRP0

ξ;゚听)ξ「・・・・ッ!!!この――――」

ああ、最近の幻覚はすすんでるなあ、僕に向かってビンタまで―――

そこまで考えて、僕の頬にバチン!という大きな音と共に痛みが走る。

(;^ω^)「な・・・ッ!!!ツン!!!どうしうてここに!!!!?」
ξ#゚听)ξ「『どうしてここに?』じゃないわよ!!!!しばらく店に来なくなったと思ったら、こんな大怪我こさえてボーっとし て!!!」
(;^ω^)「店に行けなかったのは、色々事情があったんだお・・・・・・」

そこでまた僕の頬がバチンと音を立てた。

ξ#゚听)ξ「何言ってんのよ!!!私がどれだけ心配したと思ってんの!!!」
(;^ω^)「・・・・・・ごめんだお・・・。」
ξ゚听)ξ「旅行から帰ってきたら・・・内藤が撃たれたって聞くし・・・。」
(;^ω^)「・・・・・・・・・・・・。。」
ξ゚听)ξ「・・・・・・心配・・・・・・したんだから・・・。」
( ^ω^)「ツン・・・・・・泣いてるのかお?」
ξ#゚听)ξ「な・・・・ッ!!!バカ!!!泣いてないわよ!!!」

ツンはそう言うと、上半身だけベッドから立ち上げた僕に弱弱しくもたれかかり、僕の胸に顔をうずめた。

137 名前:
無糖栄助 ◆HOKURODlk6 投稿日: 2006/01/08(日) 02:18:28.88 ID:QnPTdZRP0

ξ゚听)ξ「泣いて・・・・・・ないわよ・・・・・・。バ カ・・・・・・。」

ツンは僕の胸に顔をうずめながら、何度も僕の胸を叩いた。
僕を叩く腕には、何時もの力は無い。
押し付けた顔の隙間からは嗚咽が漏れる。

ξ゚听)ξ「内藤・・・・・・。」
( ^ω^)「うん。」
ξ゚听)ξ「・・・・・・バカ。」
( ^ω^)「・・・・・・・・・うん。」

僕はそれから静かに、ツンの嗚咽交じりの言葉に相槌を返し続けた。
武運組に入る事になった、僕の始まりの場所で。
僕は再び新たな一歩を踏みしめたのだった。







最終話 Tomb's Doom and New Days・完


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