第一話
1 名前: 以下、名無しにかわ
りましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/01/08(日) 00:06:51.22 ID:YaZxnwwxO
ワァァァァァァ……………!!!!!
『あぁっと、ワロスマスクがコーナーへと昇ります!!
そしてそこから…………決まったぁぁぁぁ!!
シューティング・ワロス・プレスぅぅぅ!!!
』
『決まるか!?決まるか!?
ワロスマスク、フォールへと入ります!!!!!!』
『1…2……3……!!!!!』
カンカンカンカン……………
『やりました! ワロスマスク、ついに悲願の王座奪取!! ここ、VIPの地にて王者FOXから見事に勝利を奪いました!!!』
( ^ω^)「おとさん!!!見たかお!? ワロスマスクが勝ったんだお!!」
( ^ω^)「ブーンも……いつか絶対にブーンもワロスマスクみたいになるお!!!!!!」
3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし
ます 投稿日: 2006/01/08(日) 00:14:58.98 ID:YaZxnwwxO
ゴッ…
??「オラ、朝だぜ。 とっとと起きろよ」
( ;^ω^)「イテテ……今、行くお」
ルームメイトのドクオに頭を叩かれ、僕は目を覚ました。
ワロスマスクが無敗の王者FOXを破った試合から、もう十年以上が過ぎている。
僕はワロスマスクに憧れ、念願のプロレス団体に入ることができた。
しかし、団体が地方の小さな物ということもあり、いつも客の入りは微妙。
勝ったとしても、与えられるのは小さな拍手と、僅かなファイトマネーのみ。
僕はだんだんと、今の生活をつまらなく思っていった。
5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし
ます 投稿日: 2006/01/08(日) 00:21:37.29 ID:YaZxnwwxO
( ^ω^)「今日の試合はなんだお?」
('A`)「あー…俺とお前とでのタッグ戦だ。
こりゃきっとジョバーだな……」
ジョバーというのは、要するに引き立て役のことだ。
王者や人気のある新人の活躍を見せる為だけの゙やられ役゙だ。
もう何回も僕たちはジョバーを経験し、何人も僕たちを踏み台にして乗し上がっていったレスラーを見てきた。
( ;^ω^)「またかお……いい加減、目立った活躍がしたいお」
('A`)「グチってる余裕はねぇよ。
もう冷蔵庫の中には、ミルクとうまい棒が五本しかないぜ」
( ;^ω^)「ちょwwwwおまwwwwうまい棒冷やすなおwwwww」
こんな生活………もう嫌だ。
9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし
ます 投稿日: 2006/01/08(日) 00:30:38.03 ID:YaZxnwwxO
ダッダッダッ…………
('A`)「急げ、内藤! 早くしないと、またプロモーターに怒られるぞ!」
( ;^ω^)「うぇwwwまたジョバーに回されるおwwwww」
プロモーターとは、試合を決めたりする団体内、一番の有力者だ。
彼に気に入られれば、一気にスターへの階段が開ける。 中には裏金を使い、気を惹く輩もいるようだ。
僕とドクオは、お互い人付き合いが上手くなく、どうやらあまり気に入られてはいないらしい。
ダッダッダッ…
('A`)「ったく……便所に時間をかけすぎなんだよ」
( ^ω^)「コボちゃん読んでたから仕方がないお。 ほら、無駄口叩く暇があったら走るお!!」
早く行かないと………控室が使えなくなる。
11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし
ます 投稿日: 2006/01/08(日) 00:39:19.78 ID:YaZxnwwxO
ガチャッ!!
( ;^ω^)「ハァ…ハァ…何とか間に合ったお…………」
「おせーぞ、負け犬ズ」
「今日はキングDQNが来るんだから、慌ただしい姿を見せるんじゃねぇよ!!!」
('A`)「キングDQNって……確か前にNWFにいたヤツか?」
この世界ではよくあることだ。
有名なプロレス団体を何らかの理由で解雇されたり、引退した選手がこうして地方の団体に参戦することは。
中央ではダメでも、地方に行けばまだまだネームバリューが通用するからである。
('A`)「確かアイツって、男子便所でシンナー吸ってんのがバレてクビになったんじゃないのか?」
まぁ地方に来るヤツなんてこんなもんだろう。
12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし
ます 投稿日: 2006/01/08(日) 00:47:03.14 ID:YaZxnwwxO
??「だ〜れかオレの話でもしてたかぁぁぁ??」
「あっ、DQNさん!」
ビキビキ…………
DQN「俺のことはキングと呼べぇぇぇ!!!」
ガッ…………
「ひっ………ひぃぃぃ………分かりましたぁぁ…………」
これがこの世界の掟だ。
゙強い者が絶対゙
これを破った者は仲間内から外され、裏では陰湿な嫌がらせを受けたりする。
因果なものだ、こんな地方に身を落としたDQNでも、猿山の大将のように威張れるんだから………
DQN「へへへ………で、今日の俺の相手は誰なんだぁぁぁ?」
「ハイッ! あそこの不健康そうなヤツとあっちの白豚野郎ですね」
( ;^ω^)'A`)「なっ!?」
14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし
ます 投稿日: 2006/01/08(日) 00:54:39.68 ID:YaZxnwwxO
('A`#)「何だと!? オイ、2対1で負けろってのか!?」
DQN「へへへ……そうカッカすんなよ兄ちゃん。
俺の方が圧倒的に不利なんだぁ〜〜お手柔らかに頼むぜぇぇ??クククっ…………」
嘘つけ。 もう何回も経験しているから分かる。
明らかに立場が上の相手に勝ちを譲らないと、どうなるかということを……
( ^ω^)「………ドクオ、さっさと準備するお」
('A`;)「なっ………内藤も何か言えよ!!」
( ^ω^)「………キングさん、今日はよろしくお願いしますだお」
DQN「おぉ〜そっちの白いのは分かっているようだなぁぁぁ〜〜
よろしくたのむぜぇ?」
これでいいんだ。これで。
僕は間違った判断はしていない。
19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし
ます 投稿日: 2006/01/08(日) 01:03:41.03 ID:YaZxnwwxO
DQN「ふぃぃ〜〜長旅で疲れたぜぇ……おい、誰かマッサージしろや」
そう言って横になったDQNに、一斉に控室の連中が集まる。
゙クソに集まる蝿゙、ドクオもよく言ったもんだ。
DQN「おい、俺の今日の相手はどんなヤツなんだよぉぉぉ?」
「ヘェ、まぁキングにかかっちゃ…いやっ、誰でも楽勝ですね。 ヘヘへ…」
ピクッ……
ドクオのシューズを結ぶ手が止まった。
( ^ω^)「………ドクオ、落ち着くんだお」
DQN「へぇ〜〜そうかぁぁぁ……
じゃあ秒殺とかも出来ちまうかなぁぁぁあ???」
「なんか格ゲーみたいッスね!! キングなら余裕ッスよ!!」
プルプル………
( ^ω^)「……………………ドクオ、ここで我慢しないと、また飯にありつけないお。」
('A`)「分かってる……………」
正直、僕も腹にきていた。
23 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りし
ます 投稿日: 2006/01/08(日) 01:12:21.93 ID:YaZxnwwxO
「正直、アイツら控室でも浮いてるんですよねぇ…………」
「何か空気読めてないっていうか………
負け犬同士、傷を舐めあってるみたいなんスよねぇ………」ハハハハ!!!!!!
('A`#)ビキビキ……
( #^ω^)ビキビキ………
DQN「おぉ〜〜〜お前らも大変だなぁ………
負け犬ってのはしっかり調教しなきゃダメだぜぇ?」
「さすがキング!! 言う事が違いますねぇぇ」
(#'A`#)ビキビキビキビキ…
( #^ω^#)ビキビキビキビキ…
DQN「いよぉぉぉしっ!!! 俺がお前達のためにサービスをしてやろう………
一分以内にアイツらをフォールしてやるぜぇ!!
まさに秒殺だぁぁぁ!!!!!」
ハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!
('A`#)「…………っぺん……みろ……」
DQN「あぁん?」
( #^ω^)「もういっぺん言ってみろって言ったんだお!! このクソDQN!!!」
28 名前: 1
◆rDvJ0e8dDk 投稿日: 2006/01/08(日) 01:24:54.12 ID:YaZxnwwxO
DQN「んだとこのヤロォォォ!?」
( #^ω^)「やっぱりDQNは物分かりが悪いお!!
秒殺なんかやれるもんならやってみるお!!」
('A`#)「俺たちは先にスタンバってるからな、テメェは少しでも長くボスザル気分を味わってろ!!
行くぞ内藤………」
バタン…………
またやってしまった。
僕らが負け犬なんて、言われ慣れたことのはずなのに。
でも…………何故だか僕は後悔していなかった。
何故だろう、理由は分からない。
だけど間違った判断はしていないはずだ。
o('A`)「よしっ………内藤、DQNに一泡吹かせてやろうぜ」
( ^ω^)o「おk」
ドクオと共に覚悟を決め、僕くらは四角い戦場へと向かった。
29 名前: 1 ◆rDvJ0e8dDk
投稿日: 2006/01/08(日) 01:34:43.50 ID:YaZxnwwxO
ワァァァァァァァ!!!!!!
( ;^ω^)「ドクオーっ!! タッチするお!!」
('A`メ)「ガぁッ………ブー……ン……」
DQN「ひっひっひ…………まだまだイジメ足りねぇぇぇなぁぁあ」
そう言うと、DQNはドクオの片足を掴みリングの中央まで引きずっていった。
ドカッ!ドカッ!ドカッ!
DQN「オラッ!誰がボスザルだっ! 誰がDQNだっ!?」
言葉の区切りごとに、DQNはドクオを踏み付ける。
悔しいが、やはり中央の団体にいただけあり、DQNは強かった。
やっぱり僕らは負け犬なのか………
僕はどうしようもない無力感にかられ、目を伏せた。
33 名前: 以下、名無しにか
わりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/01/08(日) 01:44:40.62 ID:YaZxnwwxO
('A`メメ)「あきら……めるな……ないとっ……」
( ;^ω^)「ドクオ!!」
('A`メメ)「俺たちは…………んなトコで終わら……ない…だ…」
('A`)「だから………必死な負け犬の意地、見せてやろうぜ!!!」
そう叫ぶとドクオは勢いよく飛び起き、DQNの振り上げた右足を両手で掴み、右側に体を回転させながら倒した。
DQN「なっ……なぁっ……グァッ!!!」ドスンっ!!!
( ^ω^)「ドクオ!!」
('A`)「内藤!!タッチだ!!」
何だろうこの感じは。
今のドクオの姿を見た瞬間、全身の血が騒ぐような感じがした。
この感じ……あぁ、そうか。 ワロスマスクの試合を見た時と同じ感じ………
そうだ、僕はこれを求めていたんだ。
そう気付いたとき、ドクオの掌と僕の掌が触れた。
36 名前: 以下、名無しにか
わりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/01/08(日) 01:54:32.46 ID:YaZxnwwxO
( ^ω^)「ドクオ!! 後は任せるお!!」
僕は勢いよくリングロープを跳び越え、DQNへ向かっていった。
不思議なことに何をすべきか分かっていた。
伊達に一年も試合を経験しているわけではない。
『相手の負傷した箇所を攻める』
そのことを身体で覚えた僕は、迷わずDQNの右足を狙いにいった。
⊂二二二( ^ω^)二二⊃ ブーーーン!!
僕は両手を広げ相手の股下へ滑り込み、両足を思いきり刈った。
DQN「グァァッ!!」ドスゥンッ………
勢いよくDQNが尻餅をつく。
しかし僕は止まらず、すぐに立ち上がり、一番近くへのコーナーポストへと駆け上がって行った。
あぁこれだ、これがワロスマスクの気分か………
38 名前: 1 ◆rDvJ0e8dDk
投稿日: 2006/01/08(日) 02:04:23.59 ID:YaZxnwwxO
ダダダダ…………
( ^ω^)「うぉぉぉぉおおお!!!!」
⊂二二二( ^ω^)二二⊃ブーーーン!!!!
僕は勢いよくトップロープを蹴り後ろへ体を反らせながら、DQNへと降っていった。
ズドンっ……!!!
DQN「グッ………ハァッ…………」
('A`)「……ムーン……いや、ブーンサルトプレスだ!!!!」
『………1!!』
レフェリーのカウントが入る。
『…………2!!!』
頼む、起き上がってこないでくれ。
『………………………………………』
あぁ、長い。 たった一秒なのに、何でこんなに長いんだろう。
決まれ。決まれ。決まれっ…………
『…………………………………3!!!!!!!』
カンカンカンカン………………
42 名前: 1
◆rDvJ0e8dDk 投稿日: 2006/01/08(日) 02:11:52.26 ID:YaZxnwwxO
ゴングの音が聞こえる。
僕らは勝ったのか?
ドクオが歓喜の表情で駆け寄って来る。
('∀`)「内藤!! やったぜ!! 俺達が勝ったんだ!!」
僕はまだ現状が把握できていなかった。
頭がボーッとしてしまっている。
('∀`)「これで今日は旨い飯が食えるぜ!!
内藤っ!内藤っ!!」
あぁ………今日は何だっていいさ。
僕は今、ワロスマスクと同じ気持ちを感じられているんだから…………
??「ふむ………あの二人、なかなかやるようだね」
第一話━Destiny wind blows━ 完
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