第四話
145 名前: 1
◆rDvJ0e8dDk 投稿日: 2006/01/08(日) 16:13:07.13 ID:YaZxnwwxO
━壺の穴━
ドタンッ!! バタンッ!! ウォォォ!!!!!
広いジム内にレスラー達の怒号や衝撃音が響く。
壺の穴に来てから、早くも三週間が経った。
『クソするヒマもねぇ』とはドクオの弁だが、まさにその通りだと思う。
毎朝五時に起床してから、すぐに10kmのロードワークをこなす。
朝食を採り、それから筋トレ・受け身・ロープワーク・技の基礎の練習などをこなしていく。
受け身はこの世界で最も大事なことだ、これが出来ないことには話にならない。
相手に投げられたり、技をかけられた時に受け身がとれなければ、即、死に繋がることがあるからだ。
それだけに、この練習だけで午前中全てを費やしている。
148 名前: 1 ◆rDvJ0e8dDk
投稿日: 2006/01/08(日) 16:19:46.05 ID:YaZxnwwxO
ダダダダダ……
クルッ…
⊂二二( ^ω^)二⊃ブーン!!
バンッ!!
前転しながら勢いよく両手でマットを叩き、立ち上がる。
日頃からブーンをしているせいか一年の下積みのお陰か、僕は意外と受け身が上手だった。
ダダダダダ……
クルッ…
('A`;) セイッ!!
ズタンッ!!
('A`;)「フヒッ……」
ドクオはあまり得意でないようだけれど。
149 名前: 1 ◆rDvJ0e8dDk
投稿日: 2006/01/08(日) 16:28:14.81 ID:YaZxnwwxO
(´・ω・`)「やぁ。ドクオは相変わらず受け身が苦手なようだね」
コイツはショボン。
僕らと同期のせいかもしれないが、何かにつけて突っかかってくる。
もしかしたらライバル視しているのかもしれない。
('A`;)「アタタ……うるせーよ…」
(´・ω・`)「あと一週間で入団テストなんだ。
受け身くらいしっかり出来ないと、話にもならないよ?」
そうだ、ここのあまりの忙しさに流されて、大事な入団テストのことを忘れていた。
152 名前: 以下、名無しに
かわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/01/08(日) 16:38:33.98 ID:YaZxnwwxO
入団テストでどんな事をするのかは、僕ら練習生には連絡されていない。
噂では虎とサシで戦うとか、鬼教官『阿部高和』とヤる等いろいろあるが、どれが真実なのかは分からない。
僕らに出来ることは、来たるテストのために練習し続けるだけなんだ。
(´・ω・`)「じゃあ僕はもう行くよ。
テストに落ちたら堪らないからね」
そう言うとショボンは僕らに背を向け去って行った。
イヤミを言うためだけに来たのか?
('A`#)「チッ……イヤミな奴だぜ……」
( ^ω^)「そんなにプリプリするなお。
本番で合格して見返してやればいいお」
('A`)「オウッ!! 気合を入れてもう一度……」
ダダダダダ……
クルッ…
('A`)「セイッ!!」
ドガァンッ……………
( ^ω^)「……………お前はしばらく受け身の練習だけしてるお」
154 名前: 1 ◆rDvJ0e8dDk
投稿日: 2006/01/08(日) 16:47:01.75 ID:YaZxnwwxO
テストの日が近付くにつれて、僕らの間には緊張が高まっていった。
ドクオの奴は緊張して血便を出す始末になっている。
僕だって内心不安だ、ここで落ちたらどうなるのか知らされてもいない。
考えてみれば落ちた後のことなんか何も考えていなかった。
落ちたら僕は職を失うのだろうか? そう考えると怖くて夜も眠れない。
結局睡眠不足のままテスト前日を向かえてしまった。
157 名前: 1 ◆rDvJ0e8dDk
投稿日: 2006/01/08(日) 16:58:20.53 ID:YaZxnwwxO
その日、アルトレーナーからテストの説明があった。
アル「さて……明日のテストだが、審査方法は1対1での勝負を行ってもらう」
この発言で練習生の間に大きなざわめきが起きた。
一つはテストの内容が噂ほど過激でなかったことと、
練習生同士の対戦はこれが初で、やっと練習の成果が試せるという高揚感によるものだった。
アル「そこで対戦相手の選出方法なんだが…………」
( ;^ω^);'A`) ドキドキ…………
アル「アミダくじで決めようと思う」
( *^ω^)*'A`) ………………プッ…
アル「だっ……誰だ笑ったのはっ……」
159 名前: 1 ◆rDvJ0e8dDk
投稿日: 2006/01/08(日) 17:05:36.86 ID:YaZxnwwxO
アル「さぁ、お前達順番に名前を書き込んでいけ!」
(´・ω・`)「僕は一番をもらおう」
('A`)「俺達は………」
( ^ω^)「残り物でいいお。
残り物には福があるお」
次々とみんなが前に出て我も我もと名前を書き込んでいく。
みんな全身からみなぎる闘志を溢れさせ、既に戦闘モードに入っているのだろう。
アル「よし!全員書き込んだな。
今日は一日オフだ、各自体を休めるなり、練習に励んでくれ。
それでは解散、諸君の幸運を祈る!!」
ガタガタッ………
164 名前: 1 ◆rDvJ0e8dDk
投稿日: 2006/01/08(日) 17:14:42.67 ID:YaZxnwwxO
カッカッカッ……
('A`)「あぁ…遂に明日か」
カッカッカッ……
( ^ω^)「長いようで短いお。 あんな無茶をしてから、まだ一ヶ月しかたってないんだお」
あぁ、そうだ。 キングDQNをノシてから、まだ一ヶ月しか経ってないんだ。
いろいろあったな、それが明日で終わるかもしれないんだ………
('A`)「………内藤、緊張しているか?」
( ^ω^)「…………しているお」
('A`)「俺も緊張しているがな…明日は頑張るぜ」
('A`)「俺は負け犬で一年くすぶっていた時より、この一ヶ月の方が充実していた」
('A`)「まだ受け身も上手じゃないけど……ここで一ヶ月頑張ってきたことが出せればいいと思うんだ」
166 名前: 1 ◆rDvJ0e8dDk
投稿日: 2006/01/08(日) 17:25:03.01 ID:YaZxnwwxO
( ^ω^)「ドクオ…………」
あのヘタレでスケベなドクオが、血便を流して泣いていたドクオが………
その瞬間、何かが振っ切れた気がした。
僕は何を悩んでいたのだろう。
あんな死んでいるのと変わらないような一年より、この一ヶ月でどれだけ輝けたか。
僕はここで再びプロレスの楽しさを実感出来たんだ。
( ^ω^)「僕も……僕も全力を尽すお!!」
('A`)「もしお前が相手でも容赦しないからな!!!!」
( ^ω^)「こっちのセリフだお!!」
o('A`)「ヘッ………また明日な!!」
( ^ω^)o「また明日だお!!」
ドクオと拳を合わせ、僕は自分の部屋へと戻って行った。
もう何も怖くない、今日はゆっくりと休もう………
第四話━衝動━ 完
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