第九話

154 名前: ◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 22:17:53.63 ID:8kqat3vt0

(#゚Д゚)「ふざけるな!!!俺達が連中と戦ってる間に金勘定しかし てなかった奴が何言ってやがる!!!」

集会場になった和式の大広間にギコさんの怒声が響き渡る。
集会場に集まっている人数は二十名も居ないだろう。
流石組の突撃以降、輪呂巣会の幹部集会は幾度と無く開かれたが、その列席者は徐々に、だが確実に減っていた。
減っていった者達はみな居場所を移したのだ。
輪呂巣会幹部の座から、棺おけの中へと。
以前は丁度いい広さに感じた大広間も、今では随分広く感じる。

(#・∀・)「ふざけてんのはてめえだ!!!!手前等が何も考えずにばら撒いてる弾丸はどうやって手に入れてる?考えて物言えや!!!」

ギコさんに対して一歩も退かずに怒鳴り返したのはモララーさん。
クオリティー商事の社長だ。

155 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 22:18:20.41 ID:8kqat3vt0

今、輪呂巣会内部は真っ二つに割れていた。
輪呂巣会の中にあった有力な五つの組の内、最大派閥である喪那亜組、神山組の幹部構成員が全滅。
組の体裁すら維持できなくなった神山組と喪那亜組の組員と、その傘下の組はクオリティー商事と擬古組、武運組に吸収されていっているが、
武運組もスレスト建設との抗争や流石組の突撃で若頭と多くの構成員を失い、力を弱めている。
自然に輪呂巣会の中で、擬古組とクオリティー商事が力を強めて言った。
さらに、クオリティー商事の社長、モララーさんと、擬古組の組長、ギコさんは元来仲があまりいいとは言えない。
モナーさんが存命だった頃は、二人の間を取り持っていたらしいが、いまやそれも無い。
二人の対立は自然と激しくなっていった。

クオリティー商事、現在構成員約300名。傘下の組も含めれば総勢は約700名。
対する擬古組は、現在組員約70名。傘下の組を含めた総勢力は約500名。
そこにさらに他の輪呂巣会参加の組が同盟やら何やらで繋がっている。

157 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 22:18:47.61 ID:8kqat3vt0

商業主義のモララーさんと、軍隊上がりで超武闘派のギコさん。
輪呂巣会の商業派、穏健派がモララーさんについて、他の武闘派、過激派がギコさんについている。
後は、武運組のようにニ勢力の間をとりもとうとするか、傍観を決め込むかの二通りだ。
数の上ではモララーさんが優位だが、クオリティー商事は流石組の突撃で若頭を含めて幹部構成員数名を失い、混乱を生じさせている。
武運組長なんかは必死に二人の争いを止めようとしているが、正直今の武運組に二人のいがみ合いを止めるだけの力は無い。
今では、輪呂巣会の集会があるごとに大声で公然とののしりあうほどに二人の仲は悪化していた。
乱闘寸前にまで発展する事もしばしばだ。

(#゚Д゚)「だから弾と人を使わずに警察に任せるってのか?てめえには矜持ってモンがねえのか!!!」
(#・∀・)「ああ?流石組の連中はやりすぎた。ほっときゃそのうち豚箱行きだ!!警察にももう手は回してある!!!」
(#゚Д゚)「それじゃあこっちのメンツがたたねえって言ってんだよ!!!奴等に何人やられたと思ってる!!!」
(#・∀・)「だからなんだ?連中と戦いを起こしてさらに人を死なせる気か?そもそもなんでてめえの組だけ死人が出てないんだ!!奴等とグ ルなんじゃねえのか!!?」
(#゚Д゚)「なんだと!!!?俺達が奴等と何度撃ち合ったと思ってる!!!寝ぼけた事抜かしてんじゃねーぞ!!!」

最近の集会は終始こんな調子だ。
どちらが今後の流石組に対する対応の主導権を握るかで言い争っているのだ。

158 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 22:19:41.08 ID:8kqat3vt0

外に敵がいると言うのに、内側で揉めていて、本当に大丈夫なのだろう か。
二人の言い合いを眺める輪呂巣会会長の目は常と変わらぬ、油断のならない光を放っている。
会長は二人を一向にたしなめる様子は無いが、一体何を考えているのだろうか。

ともあれ、流石組の連中は輪呂巣組の中に確実に大きな断裂を生んでいた。









162 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 22:45:51.82 ID:8kqat3vt0

明かりを消し、暗闇と静寂に包まれる部屋の中で、死者に黙祷をささげる 者達がいた。
ある者は胸の前で十字を切り、ある者は両の手のひらを合わせ、またある者は何をするでもなく、ただその場に佇んでいる。
行動も表情も皆バラバラだ。
だが、その顔に浮かんだ使者に対する哀悼の意は皆同じだった。
舌打ちをするものや、不機嫌そうに眉を寄せている者もいるが、死者への労わりは変わらない。

「ヒッキーの兄貴、完全燃焼できたのかな。」
「最大の標的の一人を仕留めて死んだんだから、満足だっただろうさ。」
「けど、こんな特攻隊みたいな・・・。」
「貴様!!特攻隊を馬鹿にするのか!!さては貴様、特攻隊に対して”可哀想”とか感じてる勘違い野郎だな!!?」
「馬鹿な!!国家という化け物の犠牲者のどこが可哀想ではないのだ!」

( ´_ゝ`)「あー、その、なんだ。お前等落ち着け。」
 
164 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 22:46:23.79 ID:8kqat3vt0

兄者が言った。
彼らの元に集まった者達は、元流石組組員という共通点でつながっているが、主義主張も出身板もてんでばらばらな者達の集団だった。
死にたがり、精神異常者、軍事オタク、格闘技マニア、、極右論者、極左論者、それぞれが元居たコミュニティで異端とされ、排斥されたつまは じき者達だ。
元々、流石組というのは、そんな連中が集まって作られたラウンジ高句麗一門の中でも異端児扱いされている組だった。
弾かれているから外れる事を恐れず、
外れているから忌避感が無く、
忌避感が無いから躊躇の無い、
誰も彼もがブレーキの壊れた欠陥品ばかりだった。
自分が何も成さずに、ただ置いていく事に我慢ができない、自己顕示欲の塊のような奴等ばかりだった。

そんな彼らがラウンジを離れてVIPに来た理由は一つ。
今最も人数の多いこの板で、最も多くの人々の心の中に自分の存在を焼き付ける。
周囲の全てを巻き込んで、自分たちだけが事の中心に立ち、ただひたすら”馬鹿騒ぎ”を続ける。
それだけのためにVIPにやってきた。
そう、燃え尽きるためだけに。

165 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 22:46:48.93 ID:8kqat3vt0


( ´_ゝ`)「で、何人死んだ?」
(´<_` )「11人が死んで、重傷が4人。行方不明が二人。動けるのは俺達も入れて37人だな。」
( ´_ゝ`)「なんだ、もう17人も脱落したのか。」
(´<_` )「ああ。もう数人で散らばって突撃するよりも、全員で固まって行動した方がいいだろうな。」

死者11名。
その事実に対する反応もまた、人それぞれだった。
自らの死をも覚悟する者、自分だけは死なないと信じ鷹をくくる者、自分も早く死にたいと羨む者。

(´<_` )「とりあえずはタカラやつー、モヒャ達が帰ってくるのを待とう」
( ´_ゝ`)「ん、そういえばあいつ等どこ行った?」
(´<_` )「つーが、”ヒッキー達の仕留めそこなった連中にちょっかいかけてくる”と言って聞かなくてな。タカラがしぶしぶお守 りについて行ったんだが、心配なのでモヒャもつけさせた。」
( ´_ゝ`)「そうか。しかし、タカラも周囲の事を考えない我侭なやつと一緒に居ると大変そうだな。」
(´<_` )「兄者、それは自分に対する遠まわしな自虐か?」



171 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 23:09:34.16 ID:8kqat3vt0


( ^ω^)「ちょっと邪魔するお。」
( ゚∀゚)「おお、よく来たな。」

その日、僕は長岡組の事務所に来ていた。
神山組が解散して以降、長岡組に入ったショボを尋ねるためだ。

(´・ω・`)「やあ、ようこそ長岡組へ。」
/ ,' 3「zzzZZZzZZZZZZZzzZZZzzZzZZ」
( ^ω^)「なんで荒巻が?」
(´・ω・`)「さあね。暇だったんじゃないかな。とりあえず用件はなんだい?」
( ^ω^)「これを見て欲しいんだお。」

僕は懐から銃を取り出す。
前にもこんな事があったような気がする。
確かあのときは人前で銃を出してしまってショボとツンに叩かれたよな、と思っていると頭に衝撃がきた。

見ればショボが手を振り上げている。

172 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 23:10:37.82 ID:8kqat3vt0

(;^ω^)「何するんだお、ショボ。」
(;´・ω・`)「すまない。前にもこんな事があったな、と思い出していたら自然と手が動いていた。」
( ^ω^)「とりあえずこの銃の出所を探って欲しいんだお。」

僕がショボに渡した銃には”VIP Army”の刻印。
だが、前回ショボに見せたものとはデザインが全く違う。

(´・ω・`)「これは・・・・!!!りんご社のアップルP-26!!これを流石組の連中が?」
( ^ω^)「VIP Armyって彫ってあるから、多分軍からの横流し品だお。」
(´・ω・`)「それにしても妙だ。こいつはつい最近、軍でも正式装備としての採用が決まったばかりのものだ。何故連中がこんなものを。」
(;^ω^)「スレストの時みたいに軍からの横流しじゃないのかお?」
(´・ω・`)「スレストの時のアップルなら、古くなった装備をどこかの下っ端が横流しした可能性もある。だが、こいつはまだ採用されただ けで実際に配備されているわけではないんだ。」
(;^ω^)「どういう事だお?軍関係者の中に、新品を丸々横流ししてくれるような流石組への協力者がいるって事かお?」
「それは無いはずだ。軍で輪呂巣会に大規模な銃の横流しをしている、東方第三旅団の大佐以外に、大量に装備の横流しをできるような協力者は 居ない。前回のスレストの件で調査済みだ。」

その時、長岡組事務所の入り口のドアに何かがぶつかるような音が響い た。

173 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 23:11:06.15 ID:8kqat3vt0

( ゚∀゚)「ん、なんだ?」

ゴン、と先ほどよりも大きな音。
ジョルジュが組員の一人に様子を見るように伝える。
そして、組員がドアを開けて一歩踏み出した瞬間、組員が頭から血を吹いて倒れた。

(;^ω^)「な・・・・・・ッ!!!」
( ゚∀゚)「なんだオイ!!!どうした!!!!」
(´・ω・`)「やめろ!!不用意に近づくな!!!」

倒れた組員に近づいた、二人の組員がさらに倒れた。
二人とも足を打ち抜かれている。

(;゚∀゚)「待ってろ!!!今応急処置を・・・ッ!!!」

倒れた二人に近づこうとしたジョルジュを無理やりショボが押さえつける。

(´・ω・`)「落ち着け!!!狙撃されてる!!!」

そこで、さらに遠方から跳んできた銃弾が、うめいている二人の組員の内、片方の肩を抉る。

174 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 23:11:32.45 ID:8kqat3vt0


(;゚∀゚)「離せ!!!ショボ!!!!」
(´・ω・`)「馬鹿野郎!!!ああやって次の獲物が出てくるのを待ってるのが分からないのか!!!」

暴れるジョルジュを殴り、無理やり落ち着かせるショボ。
ジョルジュは平静を取り戻したのか、押し黙る。
そこで、僕等がなかなか外に出てこない事に業を煮やしたのだろう、敵の銃弾が倒れている二人のうち、片方の眉間を抉る。
撃たれた男の足が一瞬ビクリと動くと、そのまま男は二度と動かなくなった。
その様を見て生き残っている男がパニックをおこし、無事な手足をでたらめに動かしてその場から離れようとする。
そこをさらに銃弾が飛んできて、男の腎臓を抉った。
「ギャッ!!」
という短い悲鳴と共に、男の手足の動きが止まる。

(;゚∀゚)「畜生・・・・・。」
(´・ω・`)「諦めろ。もう手遅れだ。」

ジョルジュの口の奥から歯軋りの音が響く。
僕等はドアを閉め、事務所に閉じこもる。

175 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 23:11:52.74 ID:8kqat3vt0


(;^ω^)「どうすればいいんだお、ショボ!!!」
(´・ω・`)「何故俺に聞く。」
(;^ω^)「いや、だってショボは元VIP防衛大学生だったわけだし・・・。」
(´・ω・`)「まあ、方法はある。」
( ゚∀゚)「マジか!」
(´・ω・`)「ああ。まず内藤が一人で外に(ry」
(;^ω^)「あれwwwその作戦の展開の予想つくよ?www」
(´・ω・`)「そして射角から大体の位置の予測をつけて、榴弾砲か何かで・・・」
( ゚∀゚)「榴弾砲?wwwねーよwww」
(´・ω・`)「そうか、じゃあ俺達にできる事は無い。」
( ^ω^)「ちょwww諦めるのハヤスwwwww」

その時、僕は外からエンジン音が響いている事に気がついた。
不思議に思い、音のする方を眺めていると突然、事務所の壁に亀裂が入った。

( ^ω^)「?」

僕が疑問に思った次の瞬間には壁が吹き飛び、事務所内にトラックが突っ込んできている。

176 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 23:12:32.02 ID:8kqat3vt0

(;゚∀゚)「ちょwwww俺の事務所wwwww部屋借りてるだけなの にwwwww」
(´・ω・`)「ビルのオーナー、カワイソス。」

二人のそんな呟きを他所に、トラックの荷台から、銃を持った男達が五人ほど降りてくる。
彼等は降りてくるなり拳銃を構え、躊躇う事なく発砲。
長岡組の組員数名が血を流しながら地面に倒れ伏す。

(;゚∀゚)「ちょっと待て!!!ここ街中だぞ!!!あいつ等何考えてんだ!!!」
( ^ω^)「うはwwwトラックが突っ込んでくるとかwww映画みたいwwww」
(´・ω・`)「喋ってる暇があったら撃ち返せ。この非常事態だ、拳銃くらい持ってるんだろう?」

僕らは急いでテーブルや事務机を倒し、バリケードを作る。
僕は急いで先ほどショボに見せた銃を握り締める。中には弾が入ったままだ。
連中の銃撃が止んだ隙にこちらも撃ち返すが、なかなか当たらない。
僕らは、拳銃は持っていても撃った事等無いのだから仕方が無いのだが、
長岡組の組員は元はスレスト建設の構成員だった者ばかりだ。
武運組との抗争の最中に撃った事がある者は居るだろうが、銃撃戦に馴れているとは言いがたい。
対して、流石組と思われる集団の照準は正確だ。
既に十人近い組員が地に伏している。

177 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 23:13:02.38 ID:8kqat3vt0

( ^ω^)「銃撃が止んだ?」
(´・ω・`)「大方弾を撃ち尽くしたんだろう。チャンスだ。」
(;^ω^)「ゴメンだお。僕も弾切れだお。」
(´・ω・`)「・・・・・・これなんてデジャヴ?」
(*゚∀゚)「おいコラ!何時まで引き篭もってやがんだ!!俺達がそんなに恐いか?ああ?」

トラックの運転席からやけに乱暴な口調の女が出てくる。
その手には奇妙に歪曲した刀剣が握られている。
タルワールとか呼ばれる剣だ。

(*゚∀゚)「おい!!タカラ!!!何時までも寝てんじゃねえ!!!」
(;^Д^)「だって、つーちゃんがいきなりトラックで突撃するから(ry」
(*゚∀゚)「男がいちいち言い訳してんじゃねえ!!!さっさとエモノ構えろ!!!」

つーと呼ばれた女の呼びかけで、助手席で気絶していたと思われる、タカラと呼ばれた男が出てくる。
その男が構えたライフル銃を見て、僕は目を剥いた。

178 名前:
◆bP2qfddi66 投稿日: 2006/01/01(日) 23:13:29.12 ID:8kqat3vt0

( ^ω^)「ショボ、ジョルジュ。悪いけどあのタカラってヤツは僕が やらせてもらうお。」
(´・ω・`)「そうか。じゃあ俺は外の狙撃手を。」
( ゚∀゚)「おいおい、俺にあの一番ぶっ飛んでそうな女の相手をしろってのかよ。」
(´・ω・`)「なんだ?怖気づいたか?」
( ゚∀゚)「ハ、冗談言うな。」
( ^ω^)「他の有象無象どもはここの組員に任せるお!行くお!!!」

僕の合図と共に全員がバリケードから飛び出す。
一斉に連中に向かって走り出すが、トラックの開けた穴から狙撃され、長岡組組員の一人が倒れる。

(´・ω・`)「なるべく壁の穴には近づくな!!!」

ショボの叫びが響く中、僕の頭の中は違うことで一杯だった。
タカラの持っているのはライフル銃。使う弾丸は間違いなくライフル弾だろう。
須藤さんの頭は吹き飛ばされていた。
おそらく、相当大口径の銃で撃たれたのだろうと言われていたが、弾丸は何処に飛んでいったのか、見つからなかった。
そして、ライフル弾ともなれば、拳銃の銃弾に比べて格段に威力は上がる。
流石組の組員が携帯しているのは拳銃だ。
それほど口径が大きいわけではない。
撃たれたところで頭の上半分が丸ごと吹き飛んだりはしない。
つまり、目の前のタカラという男のライフル銃が凶器である可能性が、一番高いという事。

僕の体が強張る。
自分の手で敵を打てるかもしれない。
そんな思いが頭を駆け巡った。


第九話 Corpse of Corps ・完


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